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一角獣は夜に啼く

ただの日記です。

思ってることとか考えたこととか適当に書きます。 まじめな話は 「ひだまりソケットは壊れない」 に書いています。

読んだ: 『科学でわかる男と女になるしくみ』 麻生一枝 著

科学でわかる男と女になるしくみ ヒトの性は、性染色体だけでは決まらない (サイエンス・アイ新書)

科学でわかる男と女になるしくみ ヒトの性は、性染色体だけでは決まらない (サイエンス・アイ新書)

読んだ。 肉体的な男女差はもちろん、性自認や性指向が生物学的要因によって決定される、ということが生物学の研究結果に基づいて述べられていた。

  • 子供一人ひとりの興味や関心、ふるまいの傾向は、生物学的要因によって出生前に方向づけられる
  • 性自認に関していえば、「自分は男である」 とか 「女である」 と自己認識するための手掛かりとして自己の外見的特徴や自分がどのように育てられたかといったことの重要性は低いと考えられる
  • 体や脳が男性ホルモンに反応して性分化の起こる時期は限られていて、さらに体と脳では性分化の臨界点が異なる
    • 脳に関していえば、どの行動をつかさどる神経回路なのかによっても性分化の臨界点は異なる
    • 遺伝的に男性で、精巣の男性ホルモンの分泌機能に問題がなくても、男性ホルモンに対する感受性が全くなければ脳は女性型になり、身体的にも女性的な特徴をもつ
    • 男性ホルモンに対する感受性が通常より低い場合など、様々な要因で性的に曖昧な外性器をもって生まれてくる可能性がある
  • 性指向をつかさどる神経回路も脳の一部であり、性指向の性分化も上と同じく生物学的要因によるものだと考えられている

というような話が書かれている。

子どもの興味やふるまいが、生物学的要因によって出生前に方向づけられるという話に関していえば、胎児期のテストステロン濃度 (男性ホルモンの一種) の違いで幼児期の好みや能力に違いがでてくるという研究の話が紹介されていた。 男児の絵には乗り物が描かれることが多く、色使いは寒色系が多い一方、女児の絵には人や動植物が描かれることが多く、男児と比べて暖色系の色が多く使われるが、男性ホルモンの分泌量が多い病気の女児の絵がどうなるのか調べたところ、男児の絵に近い特徴だった、とか。 幼児を対象に目から心情を読み取るテストをしたところ、胎児期のテストステロン濃度の低かった人の方が点数が高かった (共感能力が高い) とか。 男の子らしさや女の子らしさといったものが育てられ方で決まるのではなく、生物学的要因 (胎児期の男性ホルモン) が関与しているということが述べられている。

一方で、高度な認知能力 (計算能力とか) に関していえば、生物学的な要因はないのではないかというような話もあった。 そもそも男女差があるのかどうかも疑問視されているとか。 例えば、「女性は数学が苦手である」 という固定観念のせいで女性が数学の能力を発揮できていない、というような仮説があって、「このテストは過去に男女差が見られました」 と試験官がコメントして男女混合のグループに数学の試験を受けさせた場合と、「男女差は見られませんでした」 と試験官がコメントして同じテストを別の男女混合のグループに受けさせた場合に、後者のグループの男女間の得点差はあまり見られなかったのに対して、前者のグループでは男性の方が女性より点数が高くなるという調査結果が紹介されていた。 この本以外でもそういう話を聞くことがあるけど、試験前のコメントだけで点数が明確に変化するなんてことがあるものなのかねー、というのが結構疑問。 固定観念によって日々の勉強態度が変わってしまって (数学の勉強をあまりしないとか) 能力差ができる、とかいう話なら納得しやすいのだけど。

実際のところまだわかってないことは多いのだろうけれど、現在わかっていることをわかりやすく説明してくれていて良い本だと思う。 調査結果の紹介時には引用などもしっかりされているので、こういう話に興味がある学生なんかは本書をとっかかりにしていろいろ調べてみてもよいのではないかと思った。 2011 年の論文もいくつか引用されていて、最新の研究結果までおさめられている雰囲気を感じた。