一角獣は夜に啼く

ただの日記です。

思ってることとか考えたこととか適当に書きます。 まじめな話は 「ひだまりソケットは壊れない」 に書いています。

読んだ : 保育園問題

横浜市の副市長として、保育園にまつわる課題や待機児童問題の解決に取り組んできた前田正子氏による保育園問題についての書籍。 2017 年の発行で、こども園についてなどの、わりと最近の話題まで取り扱われている。

序章では保育園に子どもを預けるまで (いわゆる保活) の大変さが描かれ、1 章で日本の保育制度について説明される。 様々な形態の保育施設 (認可保育園、認可外、認定こども園、家庭的保育、事業所内保育など) について説明がなされ、また、認定区分や利用指数、保育料についても説明されるので、保育制度の全体像を掴みやすい。

2 章では待機児童がなかなか解消されない理由の説明。 働き手が不足する中で、国としては 「一億総活躍」 を掲げ、出産・育児中の女性にもどんどん働いてもらいたい。 そこで待機児童対策を重点課題として保育事業の規制緩和などを推し進めていて、保育園の定員数は増加傾向にある。 少子化もあり、全国的に見ると現在は定員割れしている状況になっている。 それでも待機児童問題が発生するのは、保育利用率が上がっていること、保育の需要が都市部に偏っていること、子どもの年齢によっても需要と供給の不一致が起きていること、供給が増えればそれに応じて需要も増えること、などの理由がある。 特に地域差や年齢差による需要と供給の違いといった部分は保育業界の仕事をしていくうえでは重要だなーと感じる。 (都市部しか見てないと地方では全く受け入れられないとか、いろいろある。)

3 章は保育士不足の話。 よく言われる給与が安いという理由 *1 だけでなく、子どもの命を預かるという責任の重さや事務作業の多さ、保護者への対応が大変といった理由や、キャリアパスを描きづらいといった理由がある。

4 章は、保育の量が求められる一方で質も担保していかなければならないという話。 本書の著者は行政の人なので行政側の視点で 「量を確保しながらいかに質を担保するか」 という視点で述べられている。 最近読んでいる 『「便利な」 保育園が奪う本当はもっと大切なもの』 という本では園長という立場から質の低下について述べられていて、この本よりもさらに園に近い視点で保育の質について知ることができる。

「便利な」保育園が奪う本当はもっと大切なもの

「便利な」保育園が奪う本当はもっと大切なもの

最後の 5 章では、育児しやすい環境にするためには単に待機児童を解消するだけでは不十分という話。 実情として、子育てに不安を覚える親は多く、また、父親が育児に参加せず、他に相談相手もおらず孤独感を抱える母親が多いという。 育児休業の期間は一般的に長くて 1 年であるが、保育園への入園をしやすい時期が 4 月であるために、本当は 1 年の育児休業を取りたくても 0 歳から子どもを保育園に預ける親が都市部では多い。 保護者が保育園へ過剰な要求をするのは、保護者がそれだけ過酷な労働環境にあるからとも言える。 その他、海外の状況なども挙げながら 8 つの提言がなされている。

  1. 育児休業を原則 1 年取ることを徹底する。 0 歳児保育を減らすことで、1 歳児以降の定員を増やすことができる。
  2. 育児休業を父親と母親で交代で取ることを推進する。
  3. 育休の過度な延長よりは保育園整備を進める。 育休が長すぎるとキャリア形成に悪影響だったり、事業者の負担増といった問題がある。 (ドイツでは当初は育休を長くする方針だったが、うまくいかず保育所整備に方針転換したらしい。)
  4. 働き方改革
  5. 保育士の給与改善。
  6. 給与以外の面での保育士の待遇改善。
  7. 都心部への一極集中の解消。
  8. 幼稚園にも待機児童解消の役割を果たしてもらう。

単純に保育園を作ればいい、みたいな話ではなくて、都心集中・仕事中心になりがちな現代社会の生活を文化ごと変えてゆとりを持った生活を送るようにするのと、保育士の待遇改善、といったところが大きそう。

保育にまつわる課題をわかりやすく解説した良書だった。

*1:公立園は公務員の給与体系で年功序列で上がっていくが、私立園はそうではない