一角獣は夜に啼く

ただの日記です。

思ってることとか考えたこととか適当に書きます。 主にソフトウェア開発の話題を扱う 「ひだまりソケットは壊れない」 というブログもやってます。

読んだ : 一人になりたい男、話を聞いてほしい女

パートナーがうちに置いていったので読んだ。 『ベスト・パートナーになるために―男と女が知っておくべき「分かち愛」のルール 男は火星から、女は金星からやってきた』 (多分読んだことある気がする) の続編らしい。 著者は心理学博士で、結婚・恋愛を専門としたカウンセラーのジョン・グレイ氏。

一人になりたい男、話を聞いてほしい女

一人になりたい男、話を聞いてほしい女

原題は 『Beyond Mars and Venus : Relationship Skills for Today's Complex World』 となっていて、火星人や金星人 *1 といった紋切り型の役割分担における男女関係ではない、現代の複雑な社会における 1 対 1 の人間関係について語られる。 「現代は男性や女性といった属性でくくるのではなく個々人を尊重する時代である *2」 という前提のもとで、「生物的に男と女でホルモンバランスは違っていて、ストレス軽減のために必要となる行動は違う (それも個々人での差異はある)」 ということが主旨である。

パートナーとの人間関係について悩んでいる人はもちろん、個人として仕事とプライベートのバランスのとり方やストレス解消について知りたい人にもおすすめである。

気になったことなど

ストレス軽減とホルモンの話

男はテストステロンが多く、女はエストロゲンなどのホルモンが多い。 男女とも、自立や問題解決といった行動をすることでテストステロンが分泌されて気分は良くなるし、信頼や共生、世話といった行動をすることでエストロゲンが分泌されて気分が良くなる。 しかし、ストレス軽減という点では、男はテストステロンを増やす必要があり、女はエストロゲンを増やす必要があるらしい。 「女性が仕事などをしてテストステロンが増加する状況になっていたら、プライベートではエストロゲンなどを分泌するような行動をしてホルモンバランスを取ることが大事」、「逆に男性が主夫などをしていてエストロゲンなどが分泌されやすい状況なのであれば、別途テストステロンを増やす行動をとることが大事」 ということが書かれていた。

テストステロンを高く保ちながらオキシトシン分泌をすることも可能、って本書の後ろの方には書かれていたけど、具体的な話はどれかわからなかった。

ノルウェーのパラドクスの話

生物的に男女の適切なホルモンバランスは違っていて、ホルモン分泌のための行動も違っているわけだけど、ジェンダー差異がないことを目指している社会 (男と女で異なる役割を担うことを善しとしない社会) だと男女それぞれにとって適切なホルモンバランスのための行動が取りづらくストレス軽減ができない場合がある、という話が興味深い。

ノルウェーは、世界でもっとも男女平等が進んだ国だとされている。 だがこの国のカップルも、パートナーへの情熱が失われるという問題に悩んでいる。 離婚率は高く、独身者も多い。

この国では男女の役割分担は職場でも家庭でも平等であることが望ましいとされ、生物学的な違いを除けば、“男女は異なる存在だ” という考えを示すのは社会的に不適切だと考えられている。

ノルウェーのように男女平等が進み、選択の幅が広い社会では、あらゆる職業で男女の比率が同じになるはずだと思うかもしれない。 だが実際には、男女ともに従来型の男らしさや女らしさが求められる職業を選択する率が高い。

たとえば、幼稚園や小中学校の教員、清掃や看護などの職業では女性が、建設労働者、運転手、技術者、エンジニアなどの職業では男性の比率が高い。

これは、「ノルウェーパラドックス」 と呼ばれている現象だ。 従来型のロールメイトの関係から解放され、好きな職業を選択できる自由が増す一方で、多くの人々が伝統的な男女の役割に基づいた職業を選択しているのだ。

その理由はバランスだ。 ノルウェーでは、家で女性が女らしく、男性が男らしく振る舞うことが推奨されていないので、男性は外では伝統的な男らしい仕事を、女性は女らしい仕事をしてバランスをとろうとしているのだ。 逆にインドのように家で女らしく振る舞うことを求められている国の女性は、家の外では男性的な仕事をすることに意欲的だということがわかっている。

ノルウェースウェーデンの離婚率が高いのは事実だとして、そのデータだけでは 「社会保障が整っていて、各自が生きやすい生き方を選択しているだけ」 なのか、本書が言うように 「ジェンダー差異のないパートナー関係ではストレスを感じる人が多い」 のか、どっちが支配的なのかわからないけれど、いずれにせよ 「家庭でのパートナー関係において男女で役割の差異があるべきではない」 みたいなのを社会から要請されるのは違うよなぁという気はする。 性差や LGBT にまつわる問題のうち生きづらさに関する部分は 「生き方のステロタイプが社会に存在して、それに沿わない人間に対する圧力があること」 「他者の生き方への干渉を行う存在」 が原因として大きいと思っているので、社会として男女平等を掲げること自体は良いことだけど、役割分担について社会が個々の関係性に干渉してくるのでは生きづらさは変わんなさそう。

真の男女平等とは、違いを認め、尊重すること。 “男と女は同じ生き物だ” と考えていると、相手への理解や感謝が難しくなる。


男は洞窟タイムでテストステロンを回復する

男はテストステロンではなくエストロゲンが急上昇したときに怒りっぽくなる傾向があるらしい。 ストレスを感じるとテストステロンが減っていくので、その時には 1 人で自分の殻に閉じこもってテストステロンが増えるような活動をしてテストステロンを回復させると良い。 テストステロンの分泌に繋がる活動は下記のようなもの。

意思決定、努力とハードワーク、問題解決、プロジェクトに取り組む、効率的な行動、学習、能力開発、リスクを取る、得意なことをする、成功、勝利、競争、スポーツ、性的な行為、恋愛、相手の話を聞く、調べ物をする、車の運転。

リラックスしたストレスのない状況で、20 分から 30 分ほどテストステロンを刺激する活動をすると十分に回復できるらしい。

オキシトシン

男女ともに、オキシトシンは愛情や信頼、安全に関わる。 そして、オキシトシンはテストステロンを低下させる。

男の場合、オキシトシンでテストステロンが低下すると眠気が強まったりストレスが増えたりするし、性欲が低下することもある。 (もともとテストステロンが非常に強い場合は問題ないとのこと。)

女の場合は、オキシトシンはストレスホルモンのコルチゾールを下げる作用があり、ストレス低減に役立つらしい。 ストレス低減の効果は、エストロゲンレベルが高いほど高くなる。

オキシトシンを増やすには、非性的な肌の触れ合いが重要らしい。 また、愛情や思いやりを伴う行動、気持ちを分かち合うことでも増える。 パートナーに話を聞いてもらうだけでも効果がある。

月経周期とホルモン

女性の場合は、ストレスを減らし、幸福度を高めるのに関係するホルモンは 4 種類。 上に出てきたエストロゲンオキシトシン、テストステロン、それからプロゲステロン

エストロゲンは女性の生殖器を司る主要なホルモン。 オキシトシンは上に書いたような愛情や信頼のほか、女性においてはスムーズな出産や母乳の出、性的な興奮や反応性を高めてオーガズムを向上させることや睡眠の質に関わる。 オキシトシンエストロゲンは、何かを与え、代わりに何かを得るという持ちつ持たれつの関係 (つがいの関係) の中や、協力や協調といった行為で分泌されやすい。 男女の関係に限定されず、お店などで料金を払って対価を得るなども含まれるらしい。 (とはいえ恋愛関係で特に分泌されやすいとのこと。)

プロゲステロンエストロゲンに対してホルモンバランスを保ち、妊娠できる能力を維持する。 エストロゲンは脳を興奮状態にし、プロゲステロンは脳を落ち着かせる。 プロゲステロンは 「仲間の絆」 (パートナー以外との男女との親しく友好的な交流) を感じるときに分泌されやすい。 (同じ活動でも状況によって仲間との絆にもつがいの絆にもなり得て、それによって分泌されるホルモンも変わるらしい。) また、ストレスのない状態で自分が幸せを感じたりするための活動をしてもプロゲステロンは分泌される。

これらのホルモンバランスは月経周期に合わせて変化するため、月経周期に合わせて行うべき行動も変わってくる。

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  • 月経終了後の 5 日間 (フェーズ 1) は、エストロゲンとテストステロンが自然と増える時期で、この時期には外で仕事をする (テストステロン増加) とか家で育児をする (エストロゲン増加) などの行動が効果的らしい。 上の図だとテストステロンが増える時期はフェーズ 2 になってるけど、文章的にはフェーズ 1 が正しいっぽい?
  • 次の 5 日間 (フェーズ 2) が排卵期の前後にあたり、エストロゲンが普段の 2 倍になり、オキシトシンもピークに達する。 この時期にストレス低減に最も効果があるのはオキシトシンなので、パートナーとの時間が効果的。
  • その後の月経周期の後半から月経中の約 2 週間の間は、ストレス低減のためにプロゲステロンとわずかなテストステロンが重要。 なので、仲間との時間や自分のための時間をしっかり確保することが効果的。 パートナーに愛情を注ぎすぎて自分のための時間を確保できないというのは避けるべき。


おわり

本書の中で述べられている研究結果などについて特に参照が付いてないのでどこまで信用できるのかはちょっと微妙なところもあるけれど、ホルモンの働きとストレスや人間関係についてわかりやすく書かれていて良い本だった。 人間関係において重要なのは相手を尊重すること (属性で相手を規定しないこと) ではあるが、一般論として生物的にどういう状況でホルモンバランスがどう変化するのか、ということを知っておくのは有意義だと思う。 人間関係だけでなく、自分自身がストレスとどう向き合うかを考える上でも役立つ内容だった。

*1:『ベスト・パートナーになるために』 では、女は火星人 (協調性があり家庭的、というようないわゆる女性的な人)、男は金星人 (仕事での成功を求める、というようないわゆる男性的な人)、と説明されていた。 本書では、男でも火星人のような人もいるし、女でも金星人のような人もいる、という風に説明されている。

*2:少し前は、男が仕事をして、女が子育てをする、という役割分担の関係 (ロールメイト) で十分であったが、現代では男も女も欲求の次元が上がっており、お互いに心を満たしてくれるソウルメイトの関係を望んでいる。