一角獣は夜に啼く

ただの日記です。

思ってることとか考えたこととか適当に書きます。 主にソフトウェア開発の話題を扱う 「ひだまりソケットは壊れない」 というブログもやってます。

読んだ : 痴女の誕生

いつかの誕生日に貰ったのだけどなかなか読み進めずに今までかかってしまった。

本書は、アダルトメディアにおける 「美少女」 「熟女・人妻」 「素人」 「痴女」 「ニューハーフ・男の娘」 という 5 領域の誕生や発展の過程が書かれている。 著者は、ライター・アダルトメディア研究家の安田理央氏。 対象になっているメディアは AV をはじめ、エロ本やエロ漫画、性風俗産業やインターネットなど。

1950 年ごろの話から最近の話題まで、数十年の歴史が詰まっている。 古い話題については (自分が生まれるはるか前だから) それこそ 「歴史」 という感じ。 最近の話題 (具体的に言うと大島薫さんについてなど) については 「こういう背景があったのかー」 みたいな気持ちになりながら読んだ。

基本的に知らない世界の話なので全体的に興味深い。 メディアが人々の好みに影響を与えてきたということだったり、逆に人々の好みによってアダルトコンテンツの中身も変わってきたという事例も描かれているので、メディアと人々との相互作用の事例としても面白かった。

特に面白かった話

読んでいて面白かったのは 「素人」 の章で、写真の現像の話。

「ちょうどこの頃、『写ルンです』 みたいな簡易カメラが発売されてるんですよ。 それで写真を撮る人が一気に広がった。 彼女とディズニーランドに行って、フィルムが余ってたらその後のホテルでも、つい撮っちゃうでしょう (笑)。 でもモロな写真は撮っても街のカメラ屋じゃ現像してもらえない。 だから、うちの雑誌ではプリントして返却しますよって投稿が一気に増えたんですよ」 (『ニャン²倶楽部』 夏岡彰編集長 週刊プレイボーイ 2012 年 12 月 3 日号)

こういうのってやってる本人は困ってるけど普通に生活してる人にとっては全然見えない不で、ニッチと言えばニッチだけどそこを解決することで一定の市場獲得に繋げられるんだなー、ということを思った。 (一般論としては普通の話ではあるけど事例としてめっちゃ面白かった。)

「ニューハーフ・男の娘」 のところでは、鶏姦という言葉を初めて知った。 1955 年の調査で、女装に目覚めたきっかけに対する回答に 「戦時中軍隊で上官から鶏姦されてから」 というものがあったという話。 獣姦的なやつかと思って 「???」 ってなったけど、調べたら男子同性間猥褻行為とかそういう感じっぽい。

けい かん [0] 【鶏姦▼】
男の同性愛。 男色。

鶏姦(けいかん)とは - 鶏姦の読み方・隠語辞典 Weblio辞書

明治時代には鶏姦罪という、アナルセックスを禁止する法律が制定されていた時期もあったらしい。 なかなか厳しい時代だ……。

鶏姦条例ができたきっかけは、明治5年白川県(現熊本県)より司法省に「県内の学生が男色をするが勉学の妨げなどになり、どのように処罰すればよいか」との問い合わせがあったことだったといわれ[42]、南九州で盛んに行われていた学生間の男色行為を抑えるためだった。但し男色(同性愛)自体は禁止されたわけではなく、薩摩藩などでは男色は引き続き行われており、事実上はザル法化していた。また実際に適用された事例も青少年間ではなく、刑務所における囚人同士や女装者が関わるものがほとんどで、鶏姦された側、即ち「女」として男根を受け入れた側が罰せられている。このように男色行為でも姦通される側が犯罪視され、姦通する側はほとんど逸脱とは意識されておらず、社会的にも許容されていたとされる[43]。

日本における同性愛 - Wikipedia

それと、「ニューハーフ・男の娘」 に関して、クンニを敬遠する男が多いという話題で出てきた下記の話。

しかし驚かされたのは、取材を進めているうちに 「女にクンニするよりも、男にフェラする方がマシだ」 という意見が出てきたことだ。 最初はそれは極端な意見だと思っていたのだが、意外に賛同する人も多かった。
男性器の方が、女性器よりも清潔だから、舐めるのに抵抗がない。 そうした理由もあるが、むしろ男性器が好きな男性が多いということがわかってきた。

この理由として、大島薫さんが語るミラーニューロンの話が挙げられていた。 大体下記のような感じ。

大島は、この「ギャップ」が男の娘の魅力だと語るが、もうひとつ外せないものに「ミラーニューロン」があるという。

〈これはイタリアにあるパルマ大学のジャコーモ・リッツォラッティらの研究によって、1996年に発見されたもので、例えば、物を掴んだり、操作したりする際に活発に作用する神経細胞です。霊長類には、自分で行動していなくても、他人が何かを動かしたりしている様を見て、あたかも自分がその動作を行っているように感じる能力が備わっています。それを担うのがミラーニューロンです。
 これは女装男子を見る場合に当てはまります。
 画面の向こうの女装男子が、男性器をシゴくのを見て、こちらまでその感覚が伝わってくる。そんな「共感のしやすさ」のようなものが、男性が女装男子に興奮する要因の一つになっている気がするのです〉(前掲『ボクらしく。』より)

同様の指摘は、『女装美少年』なるAVシリーズを手掛けた、ふたなり系AVの第一人者でもあるAV監督・二村ヒトシからもなされている。

〈ぼくにはおまんこが味わっている快楽は味わえないが、ちんぽの快楽は熟知している。(中略)感情移入しやすい。われわれ男は、ゲイでなくても、じつはちんぽが大好きなのだ。それは“自分自身”だからだ〉(「ユリイカ青土社/2015年9月号)

(2ページ目)チンポのあるAV女優・大島薫が語る男の娘AVの魅力…それは健康的で勃起力の強い、大きな男根にある!?|LITERA/リテラ

一理あるとは思うけど、個人的な実感としては画面の向こうの存在が男性であれ女性であれ、興奮に対する共感しやすさのようなものってそんなに変わらないと思っているので、結構意外だった。 (共感的な作用って犬とか猫みたいに明らかに自分と姿形が異なる存在に対しても発揮されると思うので、そんなに男性器を求めなくてもいいのでは?? という気がしている。)

関係ないけど、女性がクンニ好きで男性がニューハーフ好き、みたいなのは 「FANZA REPORT」 にも表れていて面白い。

special.dmm.co.jp

おわり

という感じで面白い話がいろいろ書かれている。 どういう人におすすめかと言われると困るけど、アダルトメディア・アダルトコンテンツ・性産業などに興味があったら読むと良さそう。